本稿は、民事再生の申立などをするときに、弁護士が注意をしなければならない、経営者や会社の特質について述べたものです。いささか我流で述べていますが、すべて私の失敗のなかから会得した原則です。
民事再生などそのものは手続きとしては法律を見ながらでも手続きを執り行っていくことは可能です。また、大半は多くの債権放棄を求めるわけですが、債権者集会においては多数派工作をすることで可決されます。
しかし、会社の再建というのは手続きでできるものでも、債権カットをされたからできるものでもありません。関係者の大半がこのことを誤解しているといってよいでしょう。
むしろ会社の再建は手続きとしての債権者集会を乗り切ってから、会社がいかに利益を計上できるか、計上出来る経営者が会社の運営をしているかに懸かっています。
その経営者の能力という点では、少なくともその時点での依頼者は一旦落第した人物にほかなりませんから、今後も、つまり再生計画認可後も落第する可能性のほうが大きいと考えるべきです。
弁護士、事件の依頼にあたって、手続きを最高度に実践することは必要ですが、これとともに、会社の経営についてもそれなりに注意を払わなければなりません。
むしろ、経営者のために助言するものもいませんし、弁護士だけが唯一の助言者になってしまう場合もあります。
本稿ではみなさんがこういう立場にたった時の心得を開陳します。また、こういう立場で見たとき、再建できないとわかれば、はっきりと言うことも親切でしょう。
これから述べる原則は経営の原則ですが、このまま経営者がおこなっていれば倒産に瀕することとはありません。
つまり、この原則をまったく実践できていない経営者が倒産するのであって、みなさんは、自分の依頼者(取引先)をこの原則に当てはめてみると再建できるか否か判断できるでしょう。
倒産しない経営の原則
- 日本の現状はどうか(冷たい革命の時代)
- 倒産する会社の経営者にはタイプがある
- 企業は経営者が全て
- 経営とは経営者の思想そのものである
- 企業経営の目的は粗利の創造にある
- 経営者に必要な資質とはなにか
- 社長の仕事は、戦略にあり戦術にはない
- 日本人の失敗の原因 見栄
- 自己診断は、金融庁の検査マニュアルを利用する
- 大手信用調査会社のレポートをとり自社の格付けをみる
- 一番の自己診断方は国家による診断、つまり法人税を払っているか
- 経営者はまず情報を獲得する
- 世間をみる(百聞も百見も)
- 大本営を信用しない
- 戦争の原則を勉強しよう
- 軍部組織と機能を学ぼう
- 変化に立ちすくむな 決断する勇気
- 未来を読み込む 未来を予測する 仮説をたてる
- 金儲け(開発商品やサービス)の発見のコツ (商品作りに客つくり)
- 自分の中に戦略本部を持つ
A.日本の現状はどうか(冷たい革命の時代)
国内総生産は減少といってもほとんど同じであります。
対外的負債はない、外貨準備は世界有数。
ところが、破産宣告者数は平成14年度に20万件突破、失業率は増大5%を越えています。世界的統計基準ではこの倍に近いのではないでしょうか。
銀行の貸付も減少し、毎年20兆円ずつ減少しています。
B.倒産する会社の経営者にはタイプがある
では、どんな人が倒産するのでしょうか。
いくつか会社の倒産に立ち会っていると、それなりに倒産する会社の社長のタイプが見えてきます。
傾く会社と経営者の特徴
- ケツの重い経営者。
- 年齢は六〇歳前後。従業員の年齢も高齢化。
- 経理を自分で見ない。経理従業員任せ。
- 会計帳簿がない。あってもいい加減で会社の実体を表していない。
- 資金繰り表が作られていない。
- 顧問の税理士、会計士が会計士として機能していない。
- スピードがない。決断ができない。
- 自分のリストラができない。決断力がなく、成り行き経営である。
- 意思力に欠け最も重要な部分を切ることができない。
- 嫌なことができない。従業員のリストラができない。
- 気が優しすぎる。
- 貸す側の気持ちになって融資を申し込んでいない。
- 銀行を信用しすぎて口車にのりやすい。
- 資産をあてに借金をしすぎる。
- 仕事が余り好きでない。見栄っ張り経営をする。
- 見栄をはる。
- 過去の名門意識にこだわる。
総括すれば、高度成長の時に会社を興し、社会が右肩上がりであったからそれの中でやってきたという人です。本人はまったく経営者としての自覚も資格もないという人、そのため、右肩下がりの時代になるといっぺんに会社の経営ができなくなる。もともと会社の経営というものをしていなかったといってもよいでしょう。ただ、バーとクラブで社長といわれていた人にすぎないのです。
C.企業は経営者が全て
企業の盛衰の全ては経営者の資質、能力、考え方にあります。従業員が悪いわけでも、銀行が悪いわけでも、政府悪いわけでもありません。
なぜなら、こんなに不景気だとはいいますがGNPは数パーセントの減少にすぎませんし、戦後最大に近い倒産にもかかわらず、ほぼGNPは維持されているからです。つまり、倒産した企業の分だけ誰かが穴埋めをしているのです。ということは、悪い企業ばかりではなく、いい企業もあり、その人たちはあまりいいとはいわない。世間に目立たないように生きているというにすぎないのです。つまり、悪いという企業がある半分、もの凄くいいという企業もあるのです。
D.経営とは経営者の思想そのものである
会社の経営や、人生をひとことで言い表す方法はいくつもありますが、
会社経営(人生)=思想×健康(身体、組織)×金
と表現できるのではないかと考える次第です。これらは相互に関連しています。
思想にはいくつもの思想がありますが会社の経営にとって大切なものは歴史観や哲学と思われます。
日本の経済や社会は今多くの困難に逢着していますが、そのもっとも大きな原因は経営者自身が目先のことに追いまくられ、歴史観も哲学もなく、きっと明日も今日が続くと根拠のない期待をしたからではないでしょうか。
多くの会社経営者の方々と話し合っていて私が最も痛感するのは、この歴史観がないことです。自分独自の判断基準や方程式を持たないから、マスコミや役所や銀行の言うことを鵜呑みにして困難に逢着してるというのが本当のところではないでしょうか。
私が歯がゆく思いますのは、せっかく相談にのってそれなりに経営の指導をしていても、よって立つ思想的基盤が全く違うために話しが通じないということです。そのために対策が実行できないということが多く見受けられます。
私自身のものの考え方は、およそ通説を信じない、異説のなかにこそ真実があるという思想をもっています。
マスコミのいうこと、金融機関のいうこと、政府の発表などをおよそ信じたことがありません。むしろ、これらの発表の中から自分独自の判断基準と方程式により真実を読みとる工夫をしてきました。
E.企業経営の目的は粗利の創造にある
企業の終局の目的は倒産しないで生きていくことにあります。
そして倒産しないで生きていくためには、粗利を確保することです。どんな企業も、いくら節約してリストラしても粗利を確保しなければ生きていくことはできません。
粗利は企業のカロリーだ、という表現を使われたのはランチェスター経営の竹田陽一先生です。
ところが、どうでしょう、経営者のなかには、このことさえ分からず、なかには出血してても工場が動いていれば会社の経営だと思っている人がいます。とうてい経営者としての資質はないと判断されます。まずは粗利の創造です。
そして、その粗利はいつ生まれるか、どこから生まれるかというと、商品とサービスをお客に売って、お金をもらったときにはじめて粗利が生まれるのです。ですから、経営の目的は商品作りと、客作りに限定されてしまいます。経営者のなかには、まるで会計帳簿が利益を生むように思う人もいます。また自分の大切な後継者を会計担当にするひともいます。おおよそこれは間違いといわなければなりません。いくらきれいに帳簿をつけてもそこから利益はでません。
F.経営者に必要な資質とはなにか
経営者に必要な資質とは会社の経営に必要な要因である、哲学、戦略、戦術のうち、もっぱら、哲学と戦略を担当することです。
- 哲学とは 目に見えない 何のために会社はあるかを考えること
- 戦略とは将帥の術 目に見えない 考えること、仕組みをつくること
- 戦術とは兵士の術、目に見える 繰り返し(前者は日本陸軍の訳、後者は大村益次郎の訳)
会社の経営のうち、最も大切なのは戦略で、戦術との重要割合は2:1。
哲学はその戦略を間違いなく判断する価値観。
価値観がなければ戦略の判断に狂いが生じるが、哲学だけでは会社経営はできません。
G.社長の仕事は、戦略にあり戦術にはない
社長の仕事は、会社全体の組立、会社全体の効果的な運用、利益の出し方の創出にあります。
社長自身が注文取りに走り回ることが仕事ではありません。いかに、企業に粗利のでる仕組みを作りあげるかが仕事です。そうであるならば、社長の仕事は企業に粗利をもたらす商品づくりと客作りの仕組みをいかにつくるかということになります。
たくさんの倒産する社長を見てきました。もとより、見栄坊経営者、大言壮語経営者は倒産するのですが、それをふくめての共通は戦略がないか、時代にまったくあっていないか、はたまた、まったく経営の目的が粗利の確保にあることを知らないことです。考えない経営者はただ損する注文を繰り返し実践しているだけです。
つまり考えることができない。粗利のないところでいくら節約しても利益はでません。
H.日本人の失敗の原因 見栄
見栄をはるというのは日本人の特有の精神構造です。それは宗教観からくるのでしょう。
聖書研究家に聞いたことがありますが、聖書のあの律法のなかには見栄を戒める言葉がないそうです(傲慢はこれを戒めています)。なぜかと考えたら、聖書のように絶対神と人間とを前提にすると「絶対神に見栄をはる」という考えは最初からないそうです。
それに対して日本人は神々の世界で、世間との比較で生きている農耕民族です。そのため、絶えず世間の目が気になります。見栄社会といえましょう。そのため、日本で一番重い刑罰は切腹ではなく村八分です。
見栄を捨てれば生き残ることができます。
- <経営者堕落点数>経営者の失敗の原因の大半は見栄とおだて。
- 例)ライオンズ・ロータリークラブ、ベンツ、ゴルフ会員権、億ション、別荘、愛人(後者に進むほど堕落点数は高い)
I.自己診断は、金融庁の検査マニュアルを利用する
まず、自分の位置づけを判別する必要があります。そうでなければ、どこから改善していいかわからない。
この場合の視点は、あくまでも現実に利用されており、かつ社会的に影響力の高い採点表を使うといいでしょう。なぜなら社会はそれで動き、あなたを採点するからです。
こうした目的に使用するもので、現在一番社会的に猛威を振るっているのが、金融庁の「金融検査マニュアル」です。世の中にこれほど猛威を振るい、また評判の悪いマニュアルもないですが、金融庁がつかい、かつ、これで各銀行の債権の査定に利用するのであるから、債務者たるもの、債権者それも最大の債権者たる銀行がどのように自分を評価しているのか把握しておかなければ対策も改善もしようがないのです。
従って、「金融検査マニュアル」をみたことがないという経営者はそれだけで経営者失格です。
ただし、これに当てはめていくと、大概の会社はいい会社で「要注意先」ぐらいにしか分類されないでしょう。
しかし、このことに怒って思考を止めてはなりません。
それが国家と銀行のあなたに対する評価なのです。破綻懸念先に分類されるようであれば、少しでも改善するように努力すべきです。
J.大手信用調査会社のレポートをとり自社の格付けをみる
自分の信用調査レポートをみてどうするのかといいたいところでしょうが、後述するようにこれは是非見ておいて自社の格付けを把握しておくべきです。
これほど勝手な格付けはないですが、格付けの悪いところは放置しておいてはいけません。
つまり、銀行と言わず商社といわず、新しくあなたと取引して信用を供与しようとするところは、まずこのレポートをみるからです。帝国データバンクと東京商工リサーチの双方みておくことが望ましいでしょう。
孫子にもいう「敵を知り己を知らば百戦危うからず」と、あの蒋介石は日本軍の真珠湾湾攻撃を聞いて「日本は敵を知らず、己を知らず」と評したそうです。
K.一番の自己診断法は国家による診断、つまり法人税を払っているか
日本の企業は2003年現在で70%が赤字で法人税をはらっていません。
企業が社会の機関(ドラッカー)として、利益を得てこの利益で社会変化と技術革新に備える(ドラッカー)とすれば、70%の企業は企業としての価値がないことになります。
仮にあなたの会社が法人税を支払っていないとすれば、社会的な価値がないから早晩社会から消えていくのは当然であります。
「金融検査マニュアル」による債務者区分を待たなくても、2年連続赤字、回復の見込みがなければ早晩破綻することは目に見えています。
後述しますが、日本の企業の70%は税理士がいらないことになります。なぜなら、本当に赤字企業はどこをどう税務調査しようとも赤字であり、税金のとりようもないからです。赤字企業の税務申告を一生懸命する税理士を雇うくらいなら、どうすれば赤字にならないかを研究する税理士を雇うべきです。
この点は70%の赤字企業にかかわるすべての経営者と税理士の誤解するところです。
L.経営者はまず情報を獲得する
日本の対米宣戦布告を、蒋介石は「敵を知らず、己を知らず」と評価し、同盟国のヒットラーは「まさか」と言ったといいます。情報はそれほど大切ですが、それには原則があります。
- 大本営(政府、銀行、マスコミ)を信用しない。利用する。
- タブーのない情報を追求する。
- つまり、報道されない事柄ほど重要な事柄で、それを独自の嗅覚で追求するということです。
- 国際情報を独自の視点で追求すること。これほど新聞報道を信じてはならないものは ありません。
- 歴史からの情報を持つ。歴史観をもつ。
- ナポレオンの得意科目は歴史と数学だったようです。
- 定点観測をする。
- たとえば、私がよくやるように、日経新聞の月曜日の経済統計「銀行貸付統計」を定期的に見るなどです。
- 読書する。
- 読んで、見て。百聞は一見にしかずとはいいますが、百聞の必要。徹底的に読書せよ。
■ ヒットラー「我が闘争」から
今頃ヒットラーというと時代かかりますが、政治史のなかでは抜いて語れない「我が闘争」を読んでみました。昭和15年の日本での発売で、古本屋で手にいれました。いかにも総動員令のころの紙のない時代を反映した本です。茶色く変色し、強く当たればやぶれてしまいそうです。
もちろん反ユダヤで貫かれていますが、当時の日本人には何のことかわからなかっでしょう。それはさておき、かれが繰り返し強調するのは宣伝活動です。大衆は盲目であるから宣伝を繰り返し繰り返ししなければならないと書いて、新聞について定義しています。この部分が皆様にお知らせする部分です。この通りなのです。
ヒットラー「我が闘争」(第一書房戦時体制版 室伏高信訳147頁より)
「新聞読者の三種類」
「新聞の読者は次の三種類の分類することができる。
1.読んだものを全部信ずる層
2.いかなる報道にももはや信をおき得ないという段階に達した層
3.記事を批判的に検討しそれによって自己の判断をくだす層
勿論第一層に属する層が絶対多数である。これが大衆層である。彼らは与えられたものを全て信じてしまう。新聞はこの大衆層に対して絶対的な支配力をもっている。
(中略)
かかる事態は国民から自然の本能を奪い、代わりに若干の知識を与えたのみで、しかも 彼らにその知識が利用できないようにし向けた中途半端な教育の結果である。」
これが、ヒットラーの著作で、しかも、戦前軍部独裁体制をしいた日本で翻訳出版されたものです。
まったくこの部分を読んだとき驚きました。
しかも戦前の翻訳なのですから。
このようにヒットラーは新聞の本質を喝破しているのです。戦前の軍部の報道部がこのような翻訳をよくぞ認めたというものです。これも日独伊三国同盟の成果でしょうか。
その後、大本営発表その報道機関がいかなるものであったかは歴史が示す通りです。
私たちは、ヒットラーのいう第3の階層にならなければなりません。
M.世間をみる(百聞も百見も)
絶えず、日本と世界を見て回り、自分の会社にそのまま借用できないかみる。将来は現在の延長線上にないことはすでに説明したとおりです。そのために仮説を立てて、これを検証してとれそうな仮説をいくつも持つことです。
そのためには、日本中を歩き回り、世界中を歩き回り、絶えず自分の脳に刺激を与え、みたことを自分の会社に借用出来ないか考える。よその業界でやっていることを自分の業界に使えないかやってみる。
特に驚異といわれている国、地域、企業、店をみてみることが必要です。国なら中国をみることです。少なくとも、日本のデフレ不況の40%くらいの原因ではありそうです。
中国をみれば、どこでこれらのデフレ製品が作られているのかわかります。そうすると、ますますこれらデフレ製品が作られていき、同種の製品では対抗出来ないことが理解できます。もちろん品質の悪い製品も少なからずあるわけですから、そうとわかれば品質と対抗するとか、中国では作らない製品に特化するとかしなければなりません。
活気のある地域へいけば、どうしてうちの地域とちがうのか、うちの商店街と違うのか考えるべきです。近くに大型スーパーでも来ようものなら、通常の店舗はなぎ倒されていきますから、大型スーパーが手をださない商品群に変える必要があります。つまり、市場を小さく、特殊な市場に特化して客作りをするのです。
だめな企業というのは、世間をみることもしなければ考えることもしない。
要するに、経営者が怖いもの見たくない症候群にかかっているといってよいでしょう。
本屋に足げく通い、社会はどうなりそうなのか参考になりそうな本を見てみる。
新刊本だけでなく、古本屋も歩いてみる。そうすればなぜ、古本屋が繁盛するのかを考えてみる。
歴史をみてみる。教科書の歴史ではなく、独自の歴史観にたった研究者の本も参考にみる。
そうすることで現在がわかります。たとえばあのアメリカが、いかに古代のローマ帝国によく似ているかがわかります。そうするとアメリカの次の一手は分かろうというものです。
N.大本営を信用しない
今頃大本営なんぞというものがあるのかといぶかしがる方々もいるとは思いますが、大本営とは国家の指導部のことです。日本では戦争が始まると大本営という国家最高戦争指導部が設置されて、戦争の遂行をおこなってきました。日露戦争の時には広島に大本営が置かれ、明治天皇も広島まで赴かれ戦争指導をされたそうです。それは中国の満州が戦場となったため、できるだけ近いところに大本営を置こうとしたのです。
第2次世界大戦の際にはもちろん東京にありました。
ところが、大本営の発表する戦果はまったく嘘であり、ことごとく逆の結果でした。そのため戦後は大本営発表というと嘘の代名詞になってしまいました。
今日の大本営はなにか。それは日本の指導部である政府、銀行、マスコミといってもよいでしょう。バブルの発生と崩壊をみるまでもなく、この大本営の指導を信じて多額の借入の上、不動産を買った人たちは全財産を失っていきました。
銀行は、土地ブームにのって多くの人たちに借金をさせ、そしてバブルの破壊とともに、多くの人たちに損害をもたらしました。この段階で銀行や証券マンの口車にのってどれほど多くの人たちが不動産投資をしたでしょうか。どこの銀行もあなたが破産するまでおいかけてくるのです。
政府は債権回収機構という会社までつくって国民から金をとりたてることをするようになりました。
この時期、マスコミの一社でもバブルが崩壊するかもしれないと警告を出したところはあったでしょうか。
むしろ、日経新聞社などは「日経マネー」とかいう月刊誌を創刊したくらいでした。
つまりバブルをあおったのです。ある有名な評論家は「騰貴の時代」などという本まで書く始末でした。
つまり、政府や銀行、マスコミなどのいうことを信用していると財産を失うのです。大本営は信ずるものではなく利用するものなのです。
ヒットラーに指摘されるまでもなく自分で考える人になるのです。
大本営さえ信用しなければあなたはきっと安全な一生をおくれるでしょう。
O.戦争の原則を勉強しよう
古今東西を通じて、戦略と戦術を徹底的に研究したのは軍部です。日本では敗戦以来戦争のことを考えてはいけないという雰囲気があり、現にそのように主張する馬鹿な政党もあります。そのため、まともに戦後、戦争の原則や戦略を研究する学問はありませんでした。
戦後、戦争学の研究が禁じられた日本がなぜ経済発展を遂げたかというと、それは戦前、戦争中に戦争学をみっちりたたき込まれた軍隊出身者が会社の経営をしたからでしょう。
会社の経営者のなかには、士官学校や兵学校の出身者、それに現場で苦労した戦争体験の人たちがたくさんいて会社経営をしてきました。
どうも、この戦争体験者のつくった高度成長に甘やかされた人たちが、バブルの時代に酔ったようです。
つまり、戦争学を研究しておらず、戦略の分からない指導者たちの時代が平成の時代だったのです。ですから、外国に完膚無きにまでやられてしまいました。
高度成長の時代とバブルの時代はつまるところ、戦争学を教え込まれた戦前世代とそれを知らない戦後世代の差だったのではないでしょうか。
P.軍部組織と機能を学ぼう
近代国家の軍部はそのため陸軍省と参謀本部、そして実践部隊を明確にわけています。これは「ドイツ参謀本部の研究」(渡辺昇三、中央公論)によると、プロシャ陸軍からでてきたようです。つまり、総務部、人事部、営業部と作戦を考える企画部を徹底的にわけたのです。確かに、物資の調達や資金繰りを考えながら、作戦などは考え様はありません。
私たちも実践部門と考える部門を分ける必要があります。
パチンコ屋でもというと誤解は大きいのですが、金のある大手では有名な大学をでた若手に専門の戦略を考えさせているということです。
従業員が100人もいる企業体なら若手ばかり時間外で集めてでも、戦略委員会を造らせ次の一手をどう打つかを考えさせる必要があるかもしれません。きっとそこから次の経営者群がでてくるでしょう。
それほどできなくても、経営者は自分の頭のなかで考える組織と実践する組織をわける必要があります。
それは時間を分けたり、場所を分けたり、話す相手を分けたりするのです。
私の場合は考える時間の多くを、綾部で1人すごして考えることにしています。
Q.変化に立ちすくむな 決断する勇気
確かに歴史は変わりました。これは冷戦(第三次世界大戦)の終結によるものです。ですから、世界構造の事柄なので、元にはもどりません。私たち自身が変化するしかないのです。
どう変わったかのポイントをあげておきます。
- 自由化の流れ。これは弁護士の世界を見てもあきらかです。
- 護送船団方式、カルテル構造が終了した。
- 中国がデフレの原因で、もとに戻らない。
- 銀行は単なる貯金箱になった。銀行は助けない。
だから変化しろ、というわけです。
R.未来を読み込む 未来を予測する 仮説をたてる
経営者にとって、もっとも必要な情報は未来がどのようにうごくか。社会がどのように変化するかを読み込むことにあります。自分や、会社に変化しろといっても、どのように変化するかは、社会がどのように変化をするかを見込まなければ変化の方向もわからないからです。
時代はどのように動くか、これを予測するほど難しいことはありません。未来が少しでもわかればだれでも会社の経営に間違うことはないと思うでしょう。未来を読みとるためには、いままで私がのべてきた方法をとらなければなりません。
その場合の考える原則をいくつかを示しておきましょう。
- 現在の状態がそのまま続くことはない。
- どこかで逆転する場合があるということ。
- 異説のなかにこそ将来があるかもしれないということ。
- つまり、新聞やマスコミが大挙して取り上げ始めたら、それはそろそろおしまいになるということ。
- そして、これが最も大切ですが、現在の積み重ねに将来はない。
- 未来から現在をみて、その変化を探求することです。
つまり、人間は現在の状況を分析してそのグラフの延長線上に未来を見たがるものですが、そういう帰納的な方法では未来は読み抜けません。むしろ、未来はこうなるかもしれないといういくつも仮説をたて、それになるかという演繹的な方法で未来をよむことです。
ドラッガー博士がもう30年近くまえに「断絶の時代」をいう論説を発表して世界に驚愕をあたえました。
現在の延長線上に未来はないというのです。
当時は半信半疑でむかえられたのではないでしょうか。
でも現在になり、これほど主役がかわると30年前と今と全く社会がかわり、逆転してしまったことに気がつきます。
私ごとで恐縮ですが、平成6年(1994年)にある地方の信用金庫で経営講演を頼まれ、講演したのが、「異説のすすめ、デフレの時代」という講演でした。趣旨はとてつもないデフレ状態がはじまるから、借金を減らせ、土地を売却しろ、贅沢をするな、見栄をはるな、会社を小さくしろ、シンプルライフを目指せといって警笛をならしていました。
この趣旨で何度か講演をしましたが、だれも信用しなかったようです。この金融機関の講演では言いませんでしたが、銀行が倒産するとまでもいったものです。もちろん馬鹿にされましたが、私は真剣で、私の顧問先には口酸っぱくこれらの事柄を説き、実行してもらったところもあります。バブルの全盛期に建てたばかりの本社ビルをうってしまった会社もあります。
S.金儲け(開発商品やサービス)の発見のコツ (商品作りに客つくり)
経営の目的は、粗利益をだすこと。そのためには細分化されたその市場で一番になることです(ランチェスターの経営法則)。
ドラッカーによれば顧客創造といいます。つまり、経営者の任務は市場で一番になるための商品作りと客つくり(見込み客をつくる)ということでありますが、このことを考えることができない経営者が大半です。
■ 商品・サービス作り
- 困りごとを解決する。
- 金もうけの種は人の困っていることを解決する方法を考えること。つまり矛盾論です。必ず現実や制度のなかには相互に矛盾があり、人が困っているところがあります。それを解決するのです。毛沢東的にいえば矛盾論でしょうか。老人向けの宅配制度を作ってのびている京都の商店街がありますが、これなどは老人が困って入るのを見かねたというよりも、こうすれば既存の商店街でも生き残れるという戦略でしょう。
- 制度と現実の矛盾を解決する。
- 制度はある時点で状態を固定化し、それを法律化するものです。ところが、現実の経済は常に変化し、作られた制度は絶えず古くなります。これは制度の宿命でしょう。つまり、経済が損益貸借表的であるのに対して、制度は他者区対照表のようなものでしょう。そうすると、必ず現実との間に矛盾がでてくることになります。
商売のヒントはこれに着目することにあります。
この方法は規制産業で、規制が強ければ強いほど矛盾が大きいわけですから商売のチャンスは大きい。
規制と戦うことで徹底的に会社を大きくしてきたのが京都のMKタクシーだと思います。
この市民のサービス向上を大義名分に行政と戦う姿は市民の大きな支持を得ました。
MKの青木会長は歴史を作ったと思います。
- 制度はある時点で状態を固定化し、それを法律化するものです。ところが、現実の経済は常に変化し、作られた制度は絶えず古くなります。これは制度の宿命でしょう。つまり、経済が損益貸借表的であるのに対して、制度は他者区対照表のようなものでしょう。そうすると、必ず現実との間に矛盾がでてくることになります。
- スペシャリストになる。
- サラリーマンにも適用できることですが、飯を食うためにはスペシャリストになることです。
つまり、自分の腕一本で飯が食えるようにすることです。
私たち弁護士や医者が典型的ですが、騰貴に失敗して破産する弁護士がいても、仕事が無くなって破産する弁護士はいないと思います。
- サラリーマンにも適用できることですが、飯を食うためにはスペシャリストになることです。
- 一般標準品をつくらない。
- 工場がスペシャリストになるということは、標準品を作らない。特殊な技法、製品の研究を続け、その工場でないと満足に製品ができないとまで言わしめる工場にすることです。
価格だけで製品の競争をしようとしても中国に勝てることはありません。絶えず、特殊製品への技能を極めることだけが生き残る方便でしょう。
綾部でもオンリーワン企業やあの大手が追随できない町工場があります。
- 工場がスペシャリストになるということは、標準品を作らない。特殊な技法、製品の研究を続け、その工場でないと満足に製品ができないとまで言わしめる工場にすることです。
- 制度が変化したら乗り遅れない。
- 現実は変化し、制度は固定させようとする。時として制度がさきに変わり現実が変化する場合もある。
特に今は、日本中閉塞状態だと思っていますから、政府まで何でもありの制度改革を始めました。この中には大半利用できない、より監督を精緻にしたという改革もありますが、商売に利用できる改革もあります。それを見つけることです。
例えば労働基準法の分野の改正には派遣業法の改正があります。これなどは、制度がないころから作り、そしてそれを大きくして法律があとでできてしまったという典型例です。そしてこの状況で絶えず改正があり、多くの派遣会社ができています。
- 現実は変化し、制度は固定させようとする。時として制度がさきに変わり現実が変化する場合もある。
■ 客作り
- 小企業は小さな市場、地域、階層をねらう。
- 儲けるのはある市場を独占し、または60%位を占めることです。そのためには、自己の力の及ぶ小さな市場を見つけることです。
- 人のゆく 裏に花あり おらが春(異説のすすめ。大本営を信じるな。)
- 多くの競争相手があれば必ず値崩れが起こり利益がでません。
商売のコツは人がやらないことをすることです。競争相手がいない市場を見つけることが重要です。
私は、事務所の支店を作るのに際して、隣の滋賀県草津市にねらいを定めました。
この湖南地方は約40万人もの人口があり、また人口急増地域であるにも関わらず、
弁護士がたった2人だったのです。従来弁護士は裁判所の近くに事務所を構えていました。
その他、大津か彦根にしか弁護士がいないのです。ここに狙いを定めたのです。
- 多くの競争相手があれば必ず値崩れが起こり利益がでません。
- 兵は奇道なり(孫子)、意表をつく。
- 企画はあまり人に話すとマネをされてしまいます。特に小企業が大手に企画を提案すると、企画だけなめされていつもの系会社にさせるということが多かったのです。
ですから、特許をとるとか、オープンにするまでは絶対他人に教えないとか注意する必要があります。
- 企画はあまり人に話すとマネをされてしまいます。特に小企業が大手に企画を提案すると、企画だけなめされていつもの系会社にさせるということが多かったのです。
- ランチェスター戦略。
- ことごとく、ランチャスター戦略を使うべきです。
T.自分の中に戦略本部を持つ
経営者は企業の戦略を考えることで、報酬を貰います。実行するのは別の自分と従業員です。どの世界に進むかという戦略と個別のコンバットを混同しないこと。
自分の中に陸軍参謀本部や海軍軍令部を持つ。そのために、専門のノートを作るとか、それ用の部屋をつくるとか、物理的工夫をする。
経営は決してその日その日の惰性的積み重ねではありません。
経営者の思想と意思の表現なのです。
投稿者プロフィール
- 弁護士法人 田中彰寿法律事務所 代表。
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