※インドネシア派遣についての角田弁護士のインタビュー記事です。
途上国に司法整備支援 ~弁護士 角田多真紀
国際協力というと、例えば道路や港湾施設を造ったり、農業技術を指導したり、というイメージが強いかもしれませんが、近年は、海外の発展途上国の法律を作ったり法曹を育成したりするなど、司法制度全般にわたる整備の支援をする、司法整備支援という形の援助も行われています。
司法支援の多くはいわゆる政府の途上国援助(ODA)として行われ、日本の法律家も協力しています。
現役の弁護士や裁判官、検察官がベトナムやカンボジア、モンゴルなどに派遣され、専門家として助言し、時には現地の法曹を日本に招いて研修を実施するのです。
私は2007年春、インドネシアの和解・調停制度の強化改善を支援するプロジェクトに参加し、首都ジャカルタに赴任しました。
京都で弁護士として働いていた私は、外国への司法整備支援活動に参加するのはこれが初めてであり、支援先であるインドネシアの司法制度についてもほとんど知識がなかったため、着任後は毎日が新しい経験の連続でした。
制度改革の中心は、新しい制度を導入するための関連規則の改正で、支援先であるインドネシア最高裁の関係者と議論しながら起草作業を進めていったのですが、まずは、インドネシア式のコミュニケーションや物事の進め方の違いに戸惑いました。文字通りのアウェー戦です。
また、日本で広く利用されている訴訟上の和解や調停の制度を、インドネシアの司法制度と矛盾なく、しかも国民が利用しやすい形でどうやったら導入できるかが難しい問題でした。適切な助言をするためには、関連するインドネシアの法令その他司法制度について正しい知識が不可欠です。関係者を質問攻めにする一方で、インドネシア語で書かれた法律書を英語に訳してもらい、時には辞書片手にインドネシア語の解読に挑んだりもしました。
そのうち、インドネシアの司法制度、そしてそれを取り巻く法曹関係者や法執行の現状と、日本との違いが想像以上に大きいことをあらためて実感し、外国の法制度を変えることの重責を感じました。
2008年7月、活動が改正規則の施行の形で実を結びました。最高裁で正式に調停制度の推進が宣言され、同時に、支援国である日本への心からの感謝の言葉が述べられたときは、それまでの苦労が報われた気がして感慨ひとしおでした。
2年の任期を終えて帰国しましたが、今後も善き友人として、何らかの形でインドネシア司法改革にかかわり続けていきたいと思っています。
朝日新聞 平成21年11月14日付記事「法曹Today」より抜粋
投稿者プロフィール
- 弁護士法人 田中彰寿法律事務所 代表。
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